マンション理事会を気持ちよく運営するヒント九つ

5年間の理事生活

終わりましたー。5年間の理事(うち4年は理事長)がようやっと終わり、正直ホッとしています。(しかも自分のマンションだけじゃなく家族のマンションも兼務したりとあったので...)

その中で、それなりに学んだこともあり、今後もずっと付きまとう話ですから、ちょっとまとめてみたいなと思いました。自分のメモ代わり and 誰かの役に立てればと。

1. 議事録に背景と経緯を忘れずに
2. 管理会社とはWin-Win
3. 管理会社の担当への気づかいを
4. 提案を解釈する期間を設ける
5. 総会での議案説明は基礎と強調
6. 総会でいくつもの議案を盛りすぎない
7. 総会議案にいくつもの要素を詰め込まない
8. 理事会が負担にならないように
9. 理事会の方向性と価値観を前提に

1. 議事録に背景と経緯を忘れずに

拝啓と敬意も大事ですが、背景と経緯が大事です。

昔の議事録を読んで参考にしたいという場面が多々あります。「Aとすることとした」とだけ書いてあって「いやいや、なんでA?」というのがさっぱりわからないことが多いです。

Aであることは大抵わかります。いまも実施していることもあるでしょうし、多くの人が記憶に残っています。でも大体残ってないのは、なぜAだったのか?いまの判断のために欲しい情報は、そのAとなった背景と経緯です。もし、管理会社の方に議事録をお願いしているのであれば、決定事項に対して背景と経緯を書くようにお願いしましょう。

ただ、そこが曖昧のまま理事会での採決になってしまうこともあります。できるだけそうならず、議案の背景を明確にした上で採決したほうが良いでしょう。場合によっては、賛成多数でも、それぞれの賛成のニュアンスが違うかも知れません。賛成の理由が多様化しそうな議案に関しては、採決の後にそれぞれの方に「なぜ賛成したのか?」を聞いても良いでしょう。

「Bという問題があり、Cのことを考えると、Dは他の問題を発生させることから、Aが現実的であると判断した」

後の理事会で、すでのBという問題が存在しないのであれば、Aは必要ないかもしれません。Dの副作用が別途解決できるになっていれば、Dが新たな選択肢かもしれません。

2. 管理会社とはWin-Win

管理会社はパートナーです。ビジネスパートナーです。

少なくともそういう風に捉えていたほうが良いでしょう。

管理会社もビジネスです。このマンションの管理にビジネス的な魅力がないのであれば、撤退してしまうかもしれません。大抵は(当然)管理会社同士で引き継ぎなど行われませんから、(意図せず)管理会社が変わるというのはマンション側のコストです。撤退は大げさだとしても、何かしらのサービスレベルが下がってしまったりするかもしれません。

管理会社の仕事のスコープは曖昧です。「管理」と言われる曖昧な用語で色々な仕事をやってくれます。言えばかなり色々なことをやってくれますし、自発的な提案や行動もしてくれたりします。ただ、極端な話、管理会社の担当の方のすべての営業日の稼働を抑えられるほどの管理委託費を払っていることはないはずです。

管理会社にとってビジネスメリットが高ければ、クオリティの高い作業や自発的なプラスアルファな仕事を期待できるかもしれませんが、そうでなければ当然「やり過ぎ」を避けようとするでしょう。作業スコープが曖昧な場合、これは一般的なビジネスとして当然です。

つまり、管理会社のビジネスメリットをしっかりキープしていた方が、マンションにとってもメリットだということです。管理組合が活発で住民の方々だけでどんどん行動を起こせるのであれば、管理会社には最低限のことだけをやってもらうでも問題ないですが、なかなかそういうマンショはないと思うので管理会社のクオリティと自発性は重要です。

いっそ「管理委託費だけで、管理会社は儲けることがことができているのか?」と聞いてしまったほうがわかりやすいです。例えば、メンテナンス営業のメリットを想定した(安い)管理委託費での契約であれば、そのメリットが享受できない状況になったら、自然とクオリティは下がります。純粋な管理業務をお願いしたいのであれば、それ相応の管理委託費が必要になるでしょう。

管理会社にある程度のプレッシャーをかけてしっかりしてもらうのは大切な一方で、管理会社を吸い尽くして食いつぶすようなモンスターマンションにはなりたくないですしね。

3. 管理会社の担当への気づかいを

ちなみに、管理会社の担当の方を食いつぶさないようにするのも重要です。管理会社とマンションに挟まれて、担当の方が一人で苦しんでることもあります。

先の通り「管理会社の担当の方のすべての営業日の稼働を抑えられるほどの管理委託費ではない」はずなので、ほとんどの担当の方は掛け持ちをしています。掛け持ちしなければ人件費と管理委託費で儲けを出せないわけで。管理委託費が安い管理会社であれば、当然掛け持ちを増やしたがります。その上で、管理会社としてマンションに選んでもらうために、担当に量とクオリティを求めます。マンションも「お金を払ってるんだから」ということで量とクオリティを求めます。

この板挟みで、極端な話いつか担当の方がつぶれてしまうかもしれません。つぶれてしまっても、管理会社がすぐに代わりの人を用意してマンション側に損がないように配慮はしますが、良い担当の人がつぶれてしまえばマンションの損です。肝心なときに突然つぶれてしまったらトラブルです。引き継ぎができない状況であればやはり損です。

やはり、ビジネスパートナーです。普段、レストランでスタッフの方にも礼儀を尽くすのと同じように、管理会社の担当の人にもビジネスパートナーとしての礼儀を尽くすという感じですね。(その方がマンションにも得だということで)

4. 提案を解釈する期間を設ける

「Aを提案!」
「うーん、まあいいんじゃないかと思いますが...」
「決議!」

と速攻で決めってもいいようなレベルのものもありますが、センシティブな提案に関しては、その場で反対がなくてもいったん寝かせたほうが良いでしょう。次回の理事会で決めましょう、とか。

まず大前提としては、マンション管理に詳しい理事なんてほとんどいません。なので、提案を聞いていきなり完全に解釈できる人もほとんどいないでしょう。実際に、決まった後に後日「実はこれが心配で...」とか「やっぱりこれは...」などあれこれ出てきがちです。一度決議したものを再度議論し直すのは議事録がややこしくなって誤解を招きやすくなりますし、すでに半分実行されてるとかであればなおさらややこしいです。

また、理事会での発言がみんな積極的とも限りません。突然輪番制で理事になって来ているだけでまだ遠い世界、なんて気分になりがちです。後の立ち話で意見が出てきたり、理事会に少し慣れてきてからようやく発言するようになったりということもよくあります。

超緊急でなければ、一度「次回までに考えてきてください」というように解釈する期間を置くと良いでしょう。重要案件に関しては、何度かそれを繰り返す方が良いかも知れません。理事以外の人からのフィードバックも想定して、半年くらいアクティブに議論し続けるのも大切だと思います。

5. 総会での議案説明は基礎と強調

マンションは色々な人の集まりです。

仕事の業種も職種も違うでしょうし、立場も違うでしょうし、人生経験があまりに違います。普段の会社や組織内での会議に比べて圧倒的に多様的で、前提知識も価値観も違うでしょう。でも、ほとんどの人はマンション管理に詳しくありません。

総会は、そんな中で議案を説明することになるわけで、まるですんなり理解してもらえるとは思わないほうが良いです。基礎的な説明が薄いと、何度も何度も前提レベルの質問が来ます。すぐに理解できるとも限らないので、同じような質問も繰り返されます。

低レベル高レベルを行ったり来たりをしている内に、全体像の見通しが悪くなり、そこらで雑談や脱線も発生し、より一層混乱を引き起こしやすくなります。議長も、わからない方が多数いる中で採決はしづらいので、気付いたら一つの議案にものすごく時間を費やしてしまいがちです。

説明は、基礎をしっかり、そして、大切なことは同じことも繰り返し強調するようにした方が良いです。何が本質的なロジックで、何が付属的なロジックなのか?そこはしっかり切り分けて伝えていかないと賛同は得られにくいです。(それもうさっき説明したけど...)という心の声は禁句です。

6. 総会でいくつもの議案を盛りすぎない

(前項を踏まえて)ゆえに総会は想定以上に時間がかかるものです。

年に一回の総会なので、逃すと一年後だからあれもこれもと議案をたくさん詰め込みたくなりますが、サクッと決まるだろうと思った議案が予想以上に時間を使って「総会が終わらない」という事態を招く可能性があります。

ただでさえ、管理会社の重要説明事項や予算案の説明など、固定的に時間のかかるものがあります。また、総会後に次期の理事同士のスタートミーティングも必要ですし、駐車場や駐輪場の抽選など事務的なものを同日に行うこともあります。

想定の時間を過ぎると、単純に予定が入っていた人が帰ってしまうこともあるでしょうし、何よりも場所に時間制限がある場合は総会が中断されます。もう一回続きを別の日にというのは住民の負担という意味であまりにも非現実的なので、それだけは避けないといけません。

総会の時間が120分(2時間)あるとしても、実質的に純粋に議案にかけられる時間は多くて80分くらいと考えていたほうが良いでしょう。そう考えると、総会に出せる議案というのはわりと数が限られます。「本当に今回じゃないといけないもの」というのに絞るか、もしくは、優先度を決めて、いざ時間がないときに保留する議案を決めておいたほうが良いです。

臨時総会はあまり開催したくないものですが、開催できないわけではないので、詰め込むのはできるだけ避けた方が無難です。

7. 総会議案にいくつもの要素を詰め込まない

「あれをAにして、Bも含めて、C的にやる」というような複合議案を出すと総会時に窮地に陥りやすいです。

Aが本線の策で、Bは付属的な策で、Cはその方法論だとした場合、「Aは賛成だけどBは微妙」とか「AとBはいいけどCのやり方は微妙」というような意見も出てくるかもしれません。そういう意見が多い場合、本線であるAまで巻き込まれて否決となる可能性があります。一つの議案に要素を詰め込みすぎないことが大切です。

オプション的な要素に関しては、それだけで別の議案して「Aの議案が通ったらBの議案を審議する」というような相関関係を持たせた議案にするのも選択肢の一つです。

また、あらかじめ整理整頓して想定できていれば、総会のその場で「Bはやめて、C的じゃなくてD的にAをやる案にとっさに変更する」というアドリブを出すこともできます。

「考え直してきます」となったら一年後です。「本当に通したい要素」と「通ったらいいな的な要素」を分離して管理することが大切です。

8. 理事会が負担にならないように

ほとんどのマンションが、立候補は稀で輪番制で理事を決まり、多くの人がある意味「しかたなく」感を持って臨んでいることでしょう。協力金というような形で管理組合に数万支払えば輪番理事は免除というような制度もあるマンションもあるでしょう。

理事になりたい、なってもいい、積極的に関わっていきたい、と思う人が少なければ少ないほど、管理組合の運営は難しくなります。「やる気のある人がやればいい、その方が段取りも早い」というのも確かにある一方で、それが極端になると、理事会での議案は偏って来ますし、不公平感も生まれやすいです。(協力金や役員報酬の制度がないマンションも多いですし、あったとしてもその差を埋められるほどの金額にはならないでしょう)

やはり、できるだけ多くの方が参加するのが一番です。そのための施策は様々ですが、ひとつ心がけたいのは「理事会って大変そうだなぁ、実際に大変だったなぁ」という風にならないようにすることです。

時間が無限にあれば議案の精度はいくらでも上げられます。ただ、理事の時間は想像よりも遥かに限られているので、理想の正解を得ようとすると負荷が高くなってしまいます。例えば、一回の理事会の時間を2時間ではなく8時間にするとか、毎週のように理事会を開催するとか、理事会以外の日に理事としての活動をたくさんするとか。マンションとしてはできるに越したことはないですが、理事で生計を立てているわけではないので、みなそれぞれの生活(場合によっては収入)を削ってやることになります。

ときに重要案件でどうしても必要なときはあるかもしれませんが、できるだけそうならないように議案の優先度や許容できる妥協点などを常に探して調整することが大切です。また、それを理事会みんなで意識を合わせたり、総会で伝えることも大切です。そして、自分が理事でないときにそれを理解することも大切です。みな限られた時間で判断をしているのです。

でなければ、誰も理事をやりたがらないでしょう。数万の協力金を払って回避できるならそうしてしまいますし、一切の連絡を遮断して輪番理事なのに来ないという人も増えてしまいます。

9. 理事会の方向性と価値観を前提に

A or B ...「自分は A だ!」、「自分は B だ!」

と意見が分かれるとき、多くの場合そもそも根底にあるマンションの運用に対する価値観が違うことが要因だったりします。

例えば、「なによりも建物の予防が最優先」に対して「建物予防はほどほど生活のしやすさ最優先」という価値観、もしくは、「管理会社にはできるだけ頼らず自治意識を」に対して「理事の負荷があがらないように管理会社には遠慮なく頼る」など、そういったことが違えば、個々の議案の選択肢も変わるでしょう。そもそもそこが違うから A or B も変わるので、いくら議論しても平行線です。

S という価値観があるから A である。T という価値観があるから B である。なので、意見が分かれていまいち平行線であれば、その価値観に焦点を当てて議論して意識合わせをするが大切です。また、事前に理事会として「どういう価値観を大切にするのか?」というポリシーを意識合わせするのも良いでしょう。

継続性と人の気持ち

「気持ちよく」というのをテーマですので、そこの価値観が違えばヒントも変わるかもしれませんね。jfluteは、最高の効率性よりも継続性や人の気持ちを大切にしていきたいなと思うので、こうなりました。

jfluteとしては、狙ってできたこと、自然とやっていたということ、あとでわかったこと、やろうとしたけどできなかったこと、色々とあります。もしまた、理事をやるようなことがあったら、このヒントを思い返して意識して実践してみたいなとは思います。

...

以前、doneってブログ書いたのですが、doneじゃなかったんですねぇ...
 => マンション管理組合の理事長done

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