ディズニーシーで揺れた日 その四

ディズニーシーで揺れた日 その三」からの続き

京葉線武蔵野線が終日運転見合わせとアナウンスが
入りました。地下鉄も復旧する目処が立たないとのこと。
冷たい風がどんどん強くなり寒さは強まるばかり、いくら
なんでもこの状態で一夜を過ごすのはあまりに非現実的。

自分らは10時間くらい歩けば帰れるかもしれない場所に
住んでいて、決意して外に出て歩くかどうかの判断に
迷っていました。迷う要因の一つとして、外の情報が
何もないのです。

電話は繋がらず、iPhoneでネットは見れるにしても
関東の情報は無し。歩いて帰るためには二つの大きな川を
渡らなければなりませんが、その橋が渡れるかどうか不明、
街中で食糧や水などが手に入るのか、普通に歩けるのか、
街灯がついているのかどうか、その辺がさっぱり。
若干の食糧や水は持っていましたが、極端に寒くなって
きたこともあり、下手に出発して途中で窮地に陥る
可能性もあるので、安易に歩こうとは思えませんでした。

少なくとも自分らにとってはそれが正しい判断でした。
次の日の浦安市内を歩いたときの光景を見ると、
暗い夜にあの道を歩くのが現実的ではないことを思い
知らされたのです。これは後に。

ただ、その状況を個人的には早く知りたかったと思うの
ですが、アナウンスなどでそういうことを通知するのは
難しいのでしょう。この状況で一番怖いのは、人間の
集団心理によるパニック行動です。電話は繋がらず、
流れるニュースは悲惨なものばかり。事実とはいえ下手に
断片的な外の状況を伝えると拡大解釈される可能性があり、
そういう情報はうかつに流せないのでしょう。
やはり情報は自分で取りにいかないと、と感じました。

一方で、とある方が言っていたのですが、
「人は、危険に対しては正しく行動できるが、
不安に対してはパニックになってしまう」
発生していること(シーの外の道の液状化の状況とか)、
を素直に知らせてくれた方がみな正しく行動できたか!?
わかりません。とてもとても難しいところですね。
気付いたらカフェ・ポルトフィーノの前に長蛇の列が。
なるほど、ミラコスタの廊下などを避難所にするのかなぁ
という推測は誰もが持っていたと思いますが(無論自分も)、
それはあくまで推測で、ああ違うんだなとただそれだけ。

とにかくレストランを避難所にするという措置が
施されたようでした。トイレに行ったときに、
キャストさんとゲストの方の会話をチラ聞いた感じで、
ブロードウェイ・シアター、ホライズン・ベイが既に
開放されているとのこと。ちょっと歩いてみて、
ブロードウェイ・シアターを遠目で見た感じでも
確かにそのような雰囲気でした。

ただ、そういったことはアナウンスでは知らされません。
本来、公に知らされるべきと考えられるかもしれませんが、
これも難しいところなのでしょう。万単位の人がいる場所。
安易なアナウンスで人が殺到して別の害が出てきてしまう
可能性はあるし、基本的には妊婦さん、子連れを優先したい
ところ、それを真摯に受け止めてくれないゲストも万が一
いるかもしれません。なので、敢えてアナウンスはせず、
個々のキャストさんの力で誘導をしていったのではないかと。
これを不公平と考えてはいけないと思います。
自分も運営側なら同じような判断をしたと考えられるし。

逆に捉えると、やはり情報は自分で取りにいかないと。
そこで、寒さが一層厳しくなるハーバーで待ち続ける
のは止めて、気分を晴らすという意味でも、シーの中を
散策しようと考えました。

シーはよく知った土地ですから、頭の中には大好きな
ロストリバーのミゲルズ・エルドラド・キャンティーナで
休めればいいなと軽く考えてました。一度みんな外に
出ようと奥地からエントランスに人が移動したはずで、
逆流もあまりないので、そんなに人が残っていない
のではないかと考えました。もちろん、建物の安全性
という意味では、もっとよい選択肢があるはずですが、
それこそそこは妊婦さんや子連れの方のためのもの。

と色々歩いて回ってから、誰も歩いてなくて暗い、
「こっち来ていいのかな?」って感じの雰囲気の
ロストリバーに行ったら、あっけなくキャストさんに
案内してもらえました。どうやら開放したばかりで、
思った通り人は少ない。ひとまず強い寒い風は
凌げそうです。席に座って、恐らくここで一泊だと。

ちなみに、こういった状況では、推測が希望的観測、
希望的断定に変わってしまうことがあります。
いわゆるデマです。悪意のあるデマは論外ですが、
善人だけが集まった悪意のないデマも発生しがちです。
推測は自由で、かつ、それは必要なことですが、
推測はあくまで推測であって、
確定するまではそこには何も存在しません。
発する方も、受け取る方も、それを踏まえて情報を
整理しないと、変なデマが広がって、
短絡的な集団行動ができあがってしまうのです。

もちろん確定事項のほとんどない推測だらけの状態で、
じゃあ何もできないじゃん、ってところなのですが、
こういうときこそ「推測の濃さ」に目を向けて、
思考していくことが大事かと。情報をクロスさせたり、
ブレイクダウンさせたりして、確度の高い推測を自分で
作り上げて判断材料とする、これが大事ですね。

また、そのためには心を強く保たないと。
だからこそ、リラックス、つまり笑顔ですね。
こういう状況こそ心を保つための笑顔が必要だと。

また、数万人を相手のマネジメントって、とても難しく、
普段では想像つかない特徴的な要因が出てきたりします。
ディズニーシーのその辺の苦労が伺いしれます。
逆に、そういったところを理解して、自分なりの推測を
立てて行動する事が大事なんだと実感しました。
大集団への通知の配慮、この裏を読んでいかないと、
なかなか前向きな精度の高い推測は生まれません。

「ディズニーシーで揺れた その五」へ続く